立花隆氏といえば「田中角栄研究」の執筆で時の総理大臣を辞職に追い込んだほど日本でも屈指のフリージャーナリストでした。今では同じ読み方の政党党首を思い浮かべる方がおられるかもしれませんが、全くの別人です。思想的には自民党と相対する部分は多分にあったわけですが、その著作はこれまでいくつか拝読してきました。
若者をターゲットにした本書では、人間とは、死とは、生きるとは、考える技術など、それまで立花隆氏の経験に基づく緻密な分析がなされています。
平和・経済成長・終身雇用などこれまで当たり前であった時代から何が起きてもおかしくない不透明な時代に入りつつあります。しかし、どれほど厳しい状況に陥っても人間が考えることの根底は大きく変わりません。そのヒントとなる考え方が本書には含まれています。
本書の文末に「本で書いてるからといって何でもすぐ信用するな。自分で手にとって、自分で確かめるまで、人のいうことは信じるな。この本も含めて。」と記されています。「偉い人が言ってるから間違いない。」という考えに至ることはよくあることかもしれません。ただし、それだけでは自ら考えることを放棄することに他なりません。自分の頭で考えるためにも、その事象を考えるだけの基礎知識や歴史を知っていなければならず、そのための近道として読書というものがあるのですが、立花隆氏に言わせれば読書ですら鵜呑みにしてはならないと戒めているのです。常に疑う心が必要であるといいます。
竹原ピストルさんの歌「よー、そこの若いの」にも似た表現がありますが、10代20代の若い人たちに聞いてもらいたい言葉ですね。
最近テレビで目にするコメンテーターの発言も鵜呑みにしてはなりません。今はコメンテーターでも、この人は元々何寄りの行動をしていた人なのか、そもそも元政治家の場合の発言は特に注意が必要です。